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7月, 2017の投稿を表示しています

「プログラミングの心理学 25周年記念版」(ジェラルド・M・ワインバーグ 著)

ジェラルド・M・ワインバーグは、自身のコンピューター業界を中心としたコンサルタント業の経験をもとに、人間やシステムの性質を本質的に捉えた数多くの書籍を発表しています。 今回紹介するのは、その中の「 プログラミングの心理学 25周年記念版 」になります。 25周年は、英語ではSilver anniversaryと表現されるようで、原題は「 The Psychology of Computer Programming: Silver Anniversary Edition 」となっています。 本書題名中の25周年というのは、原著の「The Psychology of Computer Programming」の初版が発行された1971年から25年後、つまり1998年に発行された英語版のことをさして、25周年といっています。この英語版の「 The Psychology of Computer Programming: Silver Anniversary Edition 」は、一度2005年に邦訳されて2005年に「 プログラミングの心理学―または、ハイテクノロジーの人間学 25周年記念版 」として刊行されています。今回紹介するのは、2005年に刊行された邦訳版の装丁を変えて2011年に再発刊されたものになります。ですので、おおもとの原著からは、40年経っていることになります。 本書では、1971年当時の初版の構成をそのままに、そのあとに25年後のワインバーグの振り返りが追記されるという形式をとっています。 この書評を書いている時点で、40年以上も前 (25周年を記念して加筆された部分は20年前)の内容で役に立つのと思う方も多いと思いますが、それがどうして、世の中あまり変わっていないのか、今でも十分に通用する示唆に富んだエピソードが多く紹介されています。 とはいえ12章「プログラミング言語の設計原則」で出てくる言語の話題はCOBOLとかFORTRANなので、「その言語なに?おいしいの?」「古臭い話だ!」と思う人が多いと思います。それでもよく掘り下げて読んでみると、普遍的な話題を扱っていることに気づかされると思います。これは、本書が「心理学」という言葉を使っているとおり、いつまでたっても変わらない、人間の根本的な性質を軸に書かれているからだと思い...

「世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント 第4版」(G・マイケル・キャンベル著)

今回紹介するのは、「 世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント 第4版 」です。 本書は「IDIOT'S GUIDE」シリーズの中の一冊になります。 英語の最新版は2014年刊行の第6版「 Project Management, Sixth Edition (Idiot's Guides)  」のようです。   本書では、プロジェクトマネジメントにかかわる基礎的な手法や用語が細かく解説されています。たとえば、 PDCAサイクル ガント・チャート (gantt chart) クリティカル・パス (critical path) WBS (Work Breakdown Structure) 振り返り スコープ・クリープ (scope creep) などです。本書は邦訳された書籍なので、日本語のプロジェクトマネジメント用語が英語ではどういうものになるのかも参考になると思います。 個人的には解説の途中途中で、数行さしこまれている「ときは金なり」「現場の声」「ご用心」「賢者の言葉」の項が読んでいて、面白かったです。 本書は、教科書的な書き方で書かれているので、面白みはないですが、プロジェクトマネジメントで発生する作業について網羅的に書かれているので、プロジェクトマネジメントに初めて取り組む人にとっては、よいスタート地点になると思います。より実践的なものを求める方は、「 アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 」の方がお勧めです。

「チームが機能するとはどういうことか―「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ」(エイミー・C・エドモンドソン著)

今日紹介する書籍は、「 チームが機能するとはどういうことか―「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ 」です。 本書はタイトルどおり、チーミングでも特に「学習」という部分に特に重点を置いて書かれています。 原著は「 Teaming: How Organizations Learn, Innovate, and Compete in the Knowledge Economy 」になります。直訳すると「チーミング: 知識経済の中で、いかにして組織は学習し、イノベーティブになり、競争するか」にでもなるでしょうか。 この書籍については直訳より、邦訳版の題名の方が断然よいと思います。私が本書の内容を読んだ限りでも、邦訳版の題名は、本書の内容をよく表していると思います。 予断ですが、Innovationの訳は日本語では、カタカナ英語のイノベーションが一般的になっているとは思いますが、何かもっとピッタリ来る日本語はないのでしょうか。 本書はリーダーがトップダウンの決定を下すのではなく、チームメンバーそれぞれが自身の専門性や得意分野を生かし、意見の対立を乗り越えて、チーム全体で学習しながらチーム全体のパフォーマンスを上げるためには、どうすればよいかについて実例を交えながら詳細に述べられています。 こういったチーミングやマネジメントの話は、掘り下げていくと、人間の内面に深く根ざした部分にたどり着き心理学の研究結果が大いに役に立つものですが、本書もその例に漏れず、心理学分野の研究結果も交えなながら、効果的なチーミング手法について解説がなされています。例えば、人間は今まで自分が経験してきたものによって、現在の状況の認識が左右されているという観点(=フレーミング)から、革新的なプロジェクトを成功させるためには、どのような「フレーミング」が適切かを解き明かし、またリーダーはどのようにしてチームに適切なフレームを導入することができるかについて解説しています。 多くの書籍で「失敗」から学ぶことの重要性について語られていますが、本書では「失敗」を罰せられない環境づくりがなければ、「失敗」から学ぶことは難しいと指摘しています。本書では、失敗を「防ぐことのできる失敗」「複雑な失敗」「知的な失敗」に分類し、「防ぐことのできる失敗」は根本原因の究明を行い、「複雑な...

「よい戦略 悪い戦略」 (リチャード・P・ルメルト著)

今日紹介させていただくのは、リチャード・P・ルメルトの「 良い戦略、悪い戦略 」です。 私は本書を読んで、リチャード・P・ルメルトの他の書籍を読んでみたいと思ったのですが、どうも2017年現在ではこの一冊ぐらいしか一般向けの書籍はないようです。残念。 定番の原著の紹介ですが、原著の題名は「 Good Strategy / Bad Strategy: The Difference and Why It Matters 」です。この書籍については邦訳版の題名は、ほぼ直訳になっています。 副題もつけて訳せば「よい戦略、悪い戦略: その違いとなぜその違いが大事なのか」になるでしょうか。 私は、著者の意見に共感する部分が多く、時間を置いては読み直して、読み直すたびに著者の「よい戦略」の立て方を頭の中に入れなおし、「悪い戦略」に自分が陥っていないか確認しています。本書では、まず「よい戦略」の実例を挙げ、その後「悪い戦略」を徹底的に(!)こき下ろしてその特徴を解き明かし、それ以降は「閾値効果」「テコ入れ効果」「おもしろみのある競争優位」など数多のキーワードを使って筆者独自の視点で「よい戦略」の特徴を丁寧に説明しています。 本書は共感する部分が多く、全部紹介したくなってしまうのですが、「よい戦略」については、是非本書を読んでもらうとして、特に私が強く共感した戦略とリソースの部分を紹介します。筆者は戦略とリソースの関係をこう述べています。 後世に賞賛され研究されるような優れた戦略は、乏しいリソースから始まっている。 ... その希少なリソースを巧みにコーディネートするところに戦略の妙味がある。 ... あまりに有利な地位を占め、さしたる努力もなしに利益があがるようになると、ぬくぬくとぬるま湯につかって楽をしたくなるのが人情である。 成功は怠惰とうぬぼれを招き、ひいては衰退や低迷につながる。 (184~185ページから抜粋) 私もかなり限られたリソース環境でプロジェクトを運営したのですが、本書で述べられている通り、その方が「本当に必要なものだけを実施しよう」「いかにして自らの強みを生かそうか」と必死に考えるようになり、結果的によい戦略かどうかは分かりませんが、非常に意味のあるとがった戦略を立てることができたと思っています。 このリソース...

「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法―」(スコット・バークン著)

今日紹介する本は「 アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法― 」です。 本書は、著者スコット・バークン(Scott Berkun)が、マイクロソフトに長年プロジェクトマネージャーとして勤務し経験してきたことを、一般化してまとめたものになります。 著者の実体験をふんだんに取り入れて書かれていますので、実感がこもっているところがよいろ思います。 クリティカル分析の仕方やガントチャートの組み方といったプロジェクトマネジメントの技術的手法そのものではなく、プロジェクトマネージャーの心構え、コミュニケーションのとり方、よいアイデアの生み出し方といった、より実践的なスキルについて書かれた本になります。 原著の題名は日本語のカタカナ英訳と同一で「 The Art Of Project Management (Theory in Practice (O'Reilly)) 」です。邦訳の題名には著者の経歴を踏まえて「Microsoft」を入れたのだと思います。  原著の方は新版が発行されていました。ぜひ機会があれば読んでみたいと思います。 「 Making Things Happen: Mastering Project Management (Theory in Practice (O'Reilly)) 」   本書は、優先順位付けの大切さ、ものごとを成し遂げるためには「ノー」といえるようにならなければならない、社内政治から逃げてはいけない、など、私に初めてプロジェクトマネジメントとはどういうものかを教えてくれた思い出深い書籍です。 特に当時の私は社内政治という言葉を毛嫌いしていました。本書の著者の言葉をかりていうならば、 政治力(名詞): 邪悪で、弱虫で、自己中心的な人々が利用しようとするもの (399ページ) と認識していました。この章で著者(Berkun)の上司がある行動をとったことにより、著者は「政治」に対する認識を大きく改めます(上司がどんな行動をとったかは是非、本書を読んでみてください)。私は、この部分を読んで「政治」に対する自身の認識の未熟さと傲慢さを痛感し、社内政治もしなければ、物事は成し遂げられないと強く思うようになりました。 著者は、本書で様々な視点から、どのよう...

「ハーバード流 ボス養成講座 優れたリーダーの3要素」(リンダ・A・ヒル、ケント・ラインバック著)

今回、紹介する本は「 ハーバード流 ボス養成講座 優れたリーダーの3要素 」です。 私は正直「ハーバード流○○」「マッキンゼー流××」「Google流△△」などのようにいわゆる、一流と呼ばれる組織の名前を追加して、「ハロー効果(ある対象を評価をする時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて、他の特徴についての評価が歪められる現象のこと[Wikipediaより引用])」により買わせようとするマーケティング手法に対しては苦々しく思っています。本書もマーケティング戦略のためか、邦訳版の題名と原著の題名には大分乖離があります。原著の題名はシンプルに「Being the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader」、直訳すると「ボス(上司)になる : 偉大なリーダーになるための3つの必須事項」になるかと思います。 題名で売りたいだけの本で中身は薄っぺらいのかなと思い、本書を購入する気は余りなかったのですが、他の方の書評を見て購入に踏み切りました。内容は非常に実践的で濃いものですので、お勧めです!逆に題名に「ハーバード流」とか安っぽくなるのでつけない方がよい気がします。 翻訳そのものに関しては、ビジネス書の翻訳でよく見かける村井章子さんの訳だけあって、非常に読みやすいです。本書で最も読みづらかったのは、各章の導入部分で物語風に書かれている部分の登場人物の名前です。私は英米人の名前には馴染みが薄く、誰が何の役職なのかすぐに理解できなくなってしまいました。例えばブレンダ・ボールドウィン、レイ・サンチェス、ジャック・キャビットなどが登場します。日本人向けであれば、鈴木、山田、田中とかに置き換えて読むと理解が早まるのではないかと思いました。 さて肝心の内容です。本書は会社の中核を担う中間層のリーダーたち向けの本になります。彼らに求められる3つの要素(3 imperatives)として本書は 自分をマネジメントする 人脈をマネジメントする チームをマネジメントする を挙げています。単に並べただけですと抽象的ですが、各要素ごとに分量を割いて深く掘り下げて書かれています。 「2. 人脈をマネジメントする」の部分では「上司」「組織」「影響力」、「3. チームをマネジメントする」の部分では「将来像」...

「なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント」(ジェフリー・フェファー、ロバート・サットン著)

今日紹介する書籍は、「 なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント 」です。   こちらの書籍は、2000年に出版された「The Knowing-Doing Gap: How Smart Companies Turn Knowledge into Action」の邦訳になります。   「The Knowing-Doing Gap: How Smart Companies Turn Knowledge into Action」の邦訳は既に、下記の2回刊行されています。 「 変われる会社、変われない会社―知識と行動が矛盾する経営 」2000年 「 実行力不全 」2005年 私は、「なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント」を購入した後、別の本だと勘違いして「実行力不全」を取り寄せてまで買ってしまいました。どこかで読んだことがある内容だなぁと思いながら読んでいて、同じ内容の本だと気がつきました。 「なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント」の最後のページにも、過去に刊行された本を改題、修正したものだと書いてありました。 目次の見出しなど、細かいところに翻訳の差異がありますが、内容はほぼ変わりませんので、上記紹介した3冊のいずれかを購入すれば問題ないかと思います。 邦訳版は3回刊行されいぇいますが、毎回書名がずいぶん違います。原著の題名「The Knowing-Doing Gap: How Smart Companies Turn Knowledge into Action」は、私の拙い英語力で直球に訳すと 「知っていることと実行することの壁: どうやってかしこい会社は知識を行動に変えるか」 みたいな感じでしょうか。  さて、内容ですが、このあたりはそれなりの規模の組織に所属したことのある人であれば、「あるある!」と思うことが多い内容なのではないかと思います。 意思決定ばかりで行動はおあずけ プレゼンテーションの準備に時間もエネルギーも奪われる 実行すべきことの文書づくりに熱中する 計画しただけで行動した気になる 社訓を掲げて行動のかわりにする うーん。耳の痛い言葉が並んでいます。 特に印象に残ったと...